二つのリング




事もなく無事にルティエに辿り着きその街中に入ると、其処はクリスマス装飾一色で彩られやはり時期的に当然と言うべきかカップルを含めて人で溢れていた。
「おー流石に凄い人だな。」
ここぞとばかりに立ち並ぶ商人の露店や、クリスマスツリーのイルミネーションを眺めたり街中を歩く人々。
何時もは辺境らしく閑散としているだけにこの時期の賑わいは何度来ても壮観だ、とイスクは一人ごちる。
「全くだな。」
一方のセスタはと言うと、イスク程興味にそそられている訳ではなかったが満更でもなさそうに辺りを見回していた。
「昨日より更に人が増えてるなー…これ、やっぱり一度は来ないとって感じかな。」
ぽつりと呟かれる言葉に、イスクの眉が跳ね上がる。
「お前、昨日も此処来たのか。」
「あ、ああ。ユーリが用があるって言うから付き合った。あいつとゆっくり話す機会がなかったから丁度良くてな。」
「……………成る程ね。」
幾ら妹とはいえ、先を越されるのは少々気分が宜しくない。
僅かに不機嫌そうな返答に、セスタは呆れたように息を吐いた。
「なんだよその顔…ユーリ相手だろ?」
「煩いぞ。こういうデートスポットに俺より先に妹と来るとは…判ってない野郎だなあ。」
「…あのな…」
「ま、ユーリ相手じゃ仕方ないけどな。取り合えず、コレでも被って見物へ行くか。」
言うが早いか、セスタの頭にぼふん、と大きく紅い帽子を被せてに、と笑う。
「…ん?」
初めはサンタ帽子かと思ったが、どうやら違う。
「…これ…」
触れて形を確かめると、楕円形で両端に柔らかな感触の棒があり、赤い鍔が目線の端に見える。
…トナカイの角付き…と言う事は、アレな船長の帽子か。
どうやらクリスマス用に準備をしたらしい、何処までも祭り好きな野郎だ。
「鼻が真赤だからお前こっちな。」
軽く鼻先を突付いて笑う相手に渋面を浮かべるが、相手は全く気にした様子がなかった。
何時の間に被っていたのかイスクもサンタ帽なんぞを被って、セスタの腕を引っ張り祭りの中を飛び込んでいく。
暖かなものを頬張りながら並ぶ露店を色々眺めながら、ふとイスクが口にした。
「所で、ユーリの用ってなんだったんだ?」
「あれだ、あれ。ほら、サンタの衣装が入ってるって言う赤い袋。あれ、パーティで使うからって。」
「あ、成る程。なんだ…てっきり彼氏が出来て、プレゼント用に指輪でも…」
「…全裸にして、外に放り出してやろうか…?」
低く底をつく様な声に本気を感じ取って、冗談だ、と一言口にする。
「…って事はお前もそれ…」
「あー俺は持ってないぞ。ユーリが貰ってくるのを待ってただけだ。どうせ今日も此処なのは決まってたし、俺はお前と一緒に貰ってくれば良いだろう、って言われてな。」
赤い袋を貰う為には必ず面倒くさい用事を言い渡されるのだが、そのネタが割れていてはつまらないだろうと言う妹の変な気遣いだ。
イスクさん寂しがるよ、と言っていたあの妹の言動の理由に少々判らないものを感じながら、余りに必死に言うのでつい従ってしまったのだ。
「じゃあ、その間お前は雪の中一人ぼーっと待ちぼうけだったわけだ。」
お兄ちゃんの苦労だねえ、と笑うイスクに、だがセスタは何も言い返せない。
「煩い。」
「じゃあ、そのユーリの意図を汲んで、俺達も袋を貰いに行くか?」
「…そうだな、それもいいか。」
じゃあ行こうぜ、と歩き出すイスクの後を付いていきながら、セスタは昨日の事をぼんやりと思い出していた。