砂の城




 ――――これはきっと、悪夢だ。
 散漫とした思考の中でそう思う。
 このまま目を閉じて、そして目覚めればきっと――――あの宿の中に居て、そして

 傍に居た筈の、あの輪郭を思い出す。
 その期待は何度も裏切られるのだと、知りながら――――


 ぴちゃん、と何かが滴る音で目が覚めた。

 硬質の床に裸の体を投げ出したまま鎖につながれ、最早逃げる気力も尽きかけているのか耳をわずかに動かすだけに留めている。
 ああ、えっと…
 こんなところで何をしているんだっけ…
 全身がむず痒いだけで力が入らず、呆けた頭でそれでも必死で考える。
「……っ……」
 ヴェルグにバルドの呪いを解く方法を聞こうとして、手管にはまって…
 そして、何もできないまま、こんな風になってしまっている。
 どうして、と強く歯ぎしりをするが、そんな事を今更言っても仕方ないだろう。
「おお、やーっと目ぇ醒めたか。チビ」
「……ヴェルグ……」
 だるい身体を僅かに動かし顔を上げると、不遜な笑みを浮かべ見下ろすヴェルグと目が合った。
「ん? 何だあ? ご主人様のお帰りだぜ? 可愛くただいまとか何とか言ってみたららどうだ?」
 不遜な態度で生肌を晒したまま横たわるコノエを見下ろし、足で軽くつつく。
 思わずぐる、と唸り声を上げると、ヴェルグはさも面白そうに笑ってコノエを見下ろした。
「相変わらず可愛くねえなあオイ。そんな態度だとどうなるかって、そろそろ判りそうなもんだろうがなあ」
 くい、とコノエの股の間に足先を絡ませ軽く押しつけてやると、コノエの口から微かに呻く声がした。
「お、少しは良い反応するようになったじゃねえか?」
「……お、前……っ!」
「何怒ってんだよ、気持ち良いんだろうがよ?」
 そう言って両足を掴み開いてやると、濡れそぼりいきり立った欲望が見えた。
「昨日のクスリがまーだ残ってるみてえだな? すっかりやる気満々じゃねえか」
「……っ……ちが……っ……」
「んなわけねーだろ?こっちも、触るだけで良い反応してんだろ?」
 双丘の間にある恥部を軽く撫で入り口を戯れ程度にいじってやるだけで、絡むように中が蠢いているのが解る。
「い、いや、だ……っ……」
「本当に可愛くねーなあ……んならもう一寸頑張れや」
 あっさりと足を持った手を離し、再び床に放り投げてやると身体が僅かに震えたのが判る。
「ま、次戻った時は尻尾振って出迎えな。そうしたらちゃんとご褒美やるからよ」
 そのまま尾を身体に巻きつけ蹲るコノエを、ヴェルグは嘲るように笑いながら見下ろしてそう吐き捨てると、そのまま炎と共に消え失せた。
「……っ……」
 再び、しんと静まり返った空間の中、荒い息遣いだけが響く。
 中途半端に放り出された身体の疼きを堪えようと歯を食いしばるが、その意思とは裏腹に少しでも慰めようと無意識に身体を床に擦り付ける。
「……く……っ……」
 ――――惨めだ。
 知らぬ間に、コノエの頬から涙が伝っていく。
 身体を渦巻く快感が齎す苦しさに悔しさや情けなさや色々な感情が混ざり合い、コノエは心が折れそうになる。
 けれども
 ――――それは、嫌だ……
 抵抗する心が折れたら、何の可能性もなくなる。
 この状況から逃れる事も、バルドの呪いを解く術も――――
「……バ、ルド……」
 ああ、今頃バルドはどうしているのだろう。あの優しい猫は。
 リークスの企みはどうなったのだろう、他の皆は――――気になる事は沢山ある筈なのに、一番に思い浮かぶのは矢張りバルドの事だった。
 無事だろうか、自分が居なくなった事で、他の猫達から何か言われたりしていないだろうか――――あの呪いは……どうなったのだろう。
 ――――無事で、いてくれ
 ただそれだけを祈りながら、コノエは目を閉じた。


ヴェルコノもヴェルバルもバルコノもあります。ヴェルグルートでバッドエンドなのでご注意を。