月ニ哭ク




あの人は、月がとても好きだった。
だから、会いたくなるのはいつも決まってこんな満月の夜。

 

「ああ、やっちゃったなあ…」
ソウルリンカー姿の少年が、木の枝に腰掛けてぽつり、とぼやく。

事の起こりは、ギルドメンバーとの狩りも終盤に差し掛かった時の事。

突如自分のすぐ傍に現れた敵にいきなりインティミデイトをかけられ、メンバーとはぐれてしまった。
普通ならギルドマーカーを使い直ぐに合流できるのだが、撒く為に何度もテレポートを繰り返していた所為でメンバーも自分の居場所を特定するのに苦労しているようだった。
これ以上動くな、と釘を指されたものの、たった一人では魔物に見付かったら勝ち目がない。
仕方がないのでとりあえず、手近にあった木に登ってメンバー達を待つ事にした。
この辺りには飛行系の魔物がいないので、高い所に居れば襲われる事もないだろう。
例え地上から見付かったとしても、この場所からエスマでもお見舞いしてやればよい。
ギルドマーカーを見る限り合流できるのは後半刻ほどだろうから、それまでの我慢だ、と安定する位置に体を動かして木の幹に背を凭れさせた。
『アキ、そっちは大丈夫か?』
「うん、今安全そうな場所に隠れてるから多分大丈夫。そっちも気をつけて。」
『おうよ』
時折聞こえるメンバーの心配する声に応えながら、ふ、と空を見上げると夕暮れの赤がすっかり影を落として星が瞬き始めている。
「ほんとに、皆に悪い事をしたな…蝶の羽を忘れてなければよかったんだけど…。」

ああ、月も昇ってきたなあ。

そんな事を考えていると、不意に目の前を淡く光る青の光が通り過ぎる。
そのまま自分の周りをまるで心配するように飛び回る様を見て、アキは表情を和らげ目を細めた。
「…ああ。」
そっと手を伸ばすと、その光はまるで吸い付くようにその手に収まる。
これは、死者の魂。
ソウルリンカーとなって、視る事が出来るようになった―――――彼らが持つ異能力の一つだ。
「大丈夫ですよ。もうすぐ仲間もきますから…。」
まるで安心させる様に呟く声に、青の光が反応したように微かに瞬いて見える。

なんと言う優しい光だろう。
まるで、明るく光る月のような。

「…心配してくれて、ありがとう。」
姿が見える訳でも、声が聞こえるわけでもない。
本来ならば、それが誰だかすらわかるわけがないだろう。

―――――けれど。

この手の中にある光が誰のものであるか、彼にはわかっていた。


この手にある魂は、嘗て最強と謳われたロードナイトのものであり、自分と共にテコンキッドの道を歩んでいた友人を介して知り合った―――即ち、自分と縁のある人間だ。

神速とまで呼ばれた剣技はとても美しく、緋色の髪が靡く様に魅了された事を覚えている。
その頃はもう既にソウルリンカーとなる道を進んでいたので彼のようになる事はできなかったが、一緒に戦えたら良いだろう、と。


ずっとそう、思っていた。