ギルドは今日もへいわです。
「カアヒが欲しい。」

突然そんな事を言い出したのは、あるギルドのマスターたるブラックスミスだった。
「何を突然…」
「マスター、AGI型の俺たちにはどう考えても必要ないと思うんだけど。」
鈍器を手にしたハイプリーストと隣で海東剣を振るっている騎士がそれぞれに口にする。

彼らが所属するギルド名を「AGI上等」と言う。
その名の通り、神速特化型を愛するメンバーで構成されたギルドである。

無論、メンバーも一部例外を除いてもれなくAGI型なので、叩かれて回復する、という特性を持つその技は確かに不用といえる。
「けどさ、避けきれなかった分をそれで回復できるなら、ちょっとは生存率が上がるんじゃないかと思うのは俺だけか?とくにリーネ、お前はさ。」
「あんまり夢は見ないほうがいいと思うわよ。私は皆よりはちょっと耐えられるけど、所詮か弱いプリーストだし、貴方達だともっと酷い事になると思うけど。」
寧ろ、そこまで叩かれるような場所などどっちにしても死にに行くようなものだろう、と思う。
神速型は、敏捷性には富んでいるが、その分相手の攻撃に耐えられるだけの肉体の耐久性がない。
よく言えば、無駄な筋肉がないということだが、逆に避けきれない場合真っ先に倒れてしまうという事だ。
「それに、多分そんなに精神力ももたないと思うんですけど…」
迫り来るモンスターたちを殲滅している後ろから支援をしている女プリーストのリーネの隣で、エスマで止めを刺して行くソウルリンカーの少年がやはり反論してくる。
「いーや、やってみないと判らないだろう!」
モンスターを全て殲滅し終え、ブラックスミスは力説をした。
「と、言うわけで」
何がと、言うわけなんだろう、と問う間もなく、プリーストの隣にいるソウルリンカーの少年に向けて、一言告げた。
「アキ!結婚しよう!」

『何でそうなる!!!!!』

ブラックスミス以外のギルドメンバー全員の声が重なったが、当のブラックスミスは気にしてない。
「結婚すれば、確かカアヒが嫁リンカーからもらえたはず!というわけでアキ!」
手をわきわきさせながら近付くギルドマスターにアキと呼ばれたソウルリンカーは流石に慌てて後ずさった。
「ちょ、マスター!僕カアヒもカイゼルも習得する予定ありませんーーーー!!」
「それ以前に同性結婚できねー所にツッコめアキ。」
「ついでにさりげなく嫁ポジションにされてる所も突っ込んでおいた方がいいと思うぞ。」
「全く…」
ソウルリンカーの直ぐ傍に居たプリーストが間に入って妖しい動きをするブラックスミスを杖で一発突っ込みを入れた。
「アキが怯えてるから、自重してねマスター。」
あんまりやるとホモ禁止って言うわよ、とにこやかに笑うプリーストにブラックスミスは答えない。

見事に特製のスタン睡眠杖の特殊効果が発動して、暢気な顔で寝転がっていたのだから。

「あら、寝ちゃったわね。どうしよう…やっぱりこのまま放置かしら?」
さらっと怖い事を言うプリーストの後ろで、ソウルリンカーの肩を叩く手があった。
「ホモ禁止だってさ。いやあ大変だなー、アキ。」
紅い髪の騎士がにやにやと笑いながらそう言うと、ソウルリンカーはあからさまに不機嫌そうに眉を寄せた。
「そう言うヴィクターもね。」
「おいおい、俺は普通の好青年だろーが。」
「普通?…僕にキスしようとしたくせに…」
それはぼそりと呟かれたものであったはずだが。
「だあああ!おめえアレは不可抗力だろうが!」
「ちょっとそれ詳しく。」
声はほぼ同時だった。
背後から突如、ぱっと姿を現すアサシンが興味津々と言った感じで聞いてきた。
「ランバード!お前なんで隠れてんだ!」
「いやいやいや、こんなネタな話を聞いたからには飛びつかなきゃ。」
「ん?なんだなんだ、ネタだって?」
「どうしたの?」
「いや、実はさっき・・・・」
「うわあああバカアキ!お前後で覚えてろおおおお!!」

モンスターが出てくるのも構わず彼らのじゃれあいは続く。

暢気者たちのギルド「AGI上等」
今日も彼らは平和であった。


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